幼児・学童が帯状疱疹に罹患して、時々当院を受診されます。小児でもまれな疾患ではありません。大人と違い小児の場合は痛みが少なく、また、帯状疱疹の後長期に痛むことはほぼありません。
　帯状疱疹は水痘・帯状疱疹と言う名前のウイルスが原因でおこります。このウイルスに初めて感染すると水痘（水ぼうそう）になります。
水痘は熱が出て、全身のあらゆるところに赤いぶつぶつが出来て、そのうち水ぶくれになって、最後はかさぶたになります。1週間ほどで治ります。

　ミクロの世界ではなにが起こっているでしょうか。水痘に感染した子供の口や鼻から水痘・帯状疱疹のウイルスが空気中に出てきます。そのウイルスは空気中に長時間漂っています。他の子供がその空気を呼吸とともに吸い込みます。ウイルスは鼻・のど・気管にくっつきます。そして、体内に侵入します。体内に侵入したウイルスは全身をまわります。ウイルスはあちこちの体の中の細胞に侵入し、細胞内でたくさんの子供のウイルスを作ります。その作られた子供のウイルスは細胞から出て他の細胞に侵入し、また、その子供のウイルスを作ります。このようにして次々にウイルスに感染した細胞が増え、またウイルスも増えます。このままでは、体中ウイルスだらけになりウイルスに感染した細胞だらけになります。そうなれば人の体はウイルスに征服されてしまいます。そうならないために、人の免疫（防衛軍）が働きます。ウイルスを破壊するミサイル（抗体）が作られます。このミサイルは細胞の外に出てきたウイルスを破壊します。また、ウイルスの増殖の元になるウイルスに感染した細胞を死滅させる殺し屋がたくさん作られます。ウイルスは細胞内に隠れていたら、殺し屋から細胞を破壊されます。細胞の外に出ればミサイルで破壊されます。ウイルスは体の中に居場所がなくなってしまいます。そこで、ウイルスは脳神経や脊髄神経の細胞に逃げ込みます。神経細胞は再生しません。殺し屋も神経細胞を破壊することは出来ません。もし、破壊すれば一生神経がなくなり、体の感覚がなくなったり、麻痺が起こったりします。他の細胞は破壊してもしばらくすると新しい細胞が出来ますから、殺し屋細胞は遠慮なく殺すことが出来ます。神経細胞に逃げ込んだウイルスはそこでひっそりと暮らします。細胞から外で出ればミサイルで破壊されてしまいます。ミサイル（抗体）の寿命は約20日です。防衛軍のB細胞がミサイルを毎日作ります。ウイルスがあばれなくなり平和になるとミサイルを作るB細胞も徐々に引退していきます。平和なのでミサイルを作っても役に立たないからです。ミサイルの量がどんどん減ってくると神経細胞の中でひっそりくらしていたウイルスは神経細胞を伝わって脊髄から皮膚に徐々に進行していきます。1日２ｃｍ位皮膚に向かってやってきます。そして皮膚に到達すれば、皮膚に水ぶくれが出来ます。脊髄の神経の場所に水ぶくれが出来るので、右か左の半身だけで、帯状に小さな水ぶくれがたくさん集まった状態になります。ここで、体の免疫（防衛軍）は「大変」だとまたミサイルを至急増産します。そして、そのミサイルによりウイルスは破壊され、ウイルスはもとの神経細胞に逃げ込み戦いは終了します。