いくら良い薬でも、持っているだけで使わないと病気は良くなりません。
患者か゛治療方針の決定に賛同し積極的に治療を受けることを「アドヒアランス」といいます。
塗り薬のアドヒアランスは５０％くらいと言われています。すなわち、医師の処方した塗り薬を指示通りに塗っている人は二人に一人です。
指示通りに塗らない人のタイプに、最初から塗らない人、最初の三日は塗るがその後止めてしまう人、時々思い立ったときに塗る人、症状がひどくなったときのみ塗る人等があります。
受診1回目、医師が今の症状に合う強さの塗り薬を出します。患者は指示通り塗っていません。薬をしっかり塗っていないので改善しません。
受診2回目、症状が改善していないので、医師はこの薬では効果がないと判断して、強い薬を処方することがあります。　しかし、薬が強くなっても患者は指示通り薬を塗っていないので症状が改善することはありません。
受診3回目、強い薬でも症状が改善しないので、最強の薬が出ます。
受診4回目、最強の薬が出ても、患者は指示通りに塗らないのでやはり改善しません。これ以上の強い薬はありません。医者はもうお手上げです。医者は患者に「薬はしっかり塗ってますか。」と尋ねます。患者が「塗ってません。」と言ってくれれば良いのですが、なかなかそうは言えません。「塗ってますよ。」と答える患者。医師は「今の薬が最強ですから、もう少し薬を続けて様子を見てみましょうか。また、同じ薬を追加で処方します。」と言います。患者は「薬はまだ残っているので今日は結構です。」と言います。指示通り薬を塗っていれば薬はなくなっているはずです。ここで、「患者が本当は薬を塗っていないな。」と分かるはずですが、波風立てずに「ああ、そうですか。それでは残っている薬を塗っていてくださいね。」と無難な返答をする医師。
このようにして、湿疹は改善しないことがあります。
他の病医院で最強の薬の処方を受けていても改善しないため当院を受診した方には、当院ではあえて弱い薬を処方します。そして、指示通りしっかり塗ることを詳しく説明します。すると、多くの場合次回受診時には改善しています。そうやって、弱い薬でも指示通りしっかり塗れば改善することを体験していただきます。いかにアドヒアランスを高めるか大切です。湿疹が良くならない原因の約半分はアドヒアランスの不良と考えられます。アドヒアランスを高める工夫をすることが湿疹を治すことにつながります。