外傷のない急性単関節痛（けがではない、急に起こる１箇所の関節痛）

まず、「化膿性関節炎」でないかと考えます。
化膿性関節炎は関節に細菌が感染して起こります。細菌が関節を破壊します。関節の破壊が進んでしまってから治療を開始すると後遺症が残ることがあります。後遺症には「持続する関節痛」・「関節が十分に曲がらない」・「骨の成長の停止」などがあります。化膿性関節炎は膝関節（〜３５%)・股関節（〜２５）・足首関節（〜１０）・肘関節（〜１０）・手首関節（〜４）・肩関節（〜５）におこります。化膿性関節炎の症状は、急性に１箇所の関節が痛むことから始まります。痛みで関節が十分に曲がらなくなります。ひどくなると、関節が赤くなったり、はれたり、また、熱をもったりします。熱も出てきます。血液検査で炎症反応が上昇します。「CRP>2mg/dl　かつ　血沈>20mm/時」の場合、 感度は９５％以上と言われています。急性単関節痛を主訴に受診された場合、化膿性関節炎の可能性を考え、当院では院内ですぐに白血球・CRP・血沈の検査をします。

化膿性関節炎に似ている疾患に単純性股関節炎があります。単純性股関節炎は２歳から１３歳の子供に起こります。原因は不明です。急に股関節が痛くなります。歩けなくなることもあります。しかし、１週間程度の安静で後遺症なく軽快します。

その他、急に股関節が痛くなる病気にペルテス病と大腿骨頭すべり症があります。ペルテス病は大腿骨頭に行く血管が詰まって、血液が行かなくなり、大腿骨頭がくずれて痛みが出ます。４−８歳の男児に多い病気です。大腿骨頭すべり症は６−１５歳の肥満の男児に多い疾患です。大腿骨頭の付け根の部分が成長軟骨線を境として滑り落ちる病気です。

まれですが、骨の腫瘍・白血病・神経芽細胞腫でも関節痛がおこります。

当院での症例
症例１：遠方より祖父母の家に遊びに来ていた２歳児です。右膝を痛がり歩かなくなったため近くのクリニックを受診し飲み薬をもらいました。翌日、右膝の痛みが強くなるため当院を受診しました。右膝が赤くはれています。右膝を動かそうとしません。化膿性関節炎・骨髄炎の疑いにてすぐに近くの病院を紹介しました。そこで関節液をとり、化膿性関節炎の診断がつきました。その後、自宅近くの病院に転院し継続加療となりました。遠方の病院のためその後の経過は分かりませんでした。

症例２：７歳児、右足首が痛くなりました。翌日、整形外科を受診し、飲み薬と塗り薬をもらい、湿布を貼ってもらって帰りました。整形外科の先生が小児科も受診しておいてと言ったので、次の日に当院を受診しました。右足首の痛みがあり関節が十分に動きませんでした。右足首の発赤・腫れ・熱感はありません。すぐに当院で血液検査をし、白血球10100, CRP8.2mg/dl, 血沈１時間値51mmの結果がでました。炎症反応が強く、化膿性関節炎が疑われたため、すぐに病院を紹介しました。病院では化膿性関節炎の診断にて１７日間入院治療しました。早期に治療を開始したので後遺症なく完治しました。

外傷のない急性単関節痛の鑑別
最重要：化膿性関節炎（至急、治療開始が必要）
頻度が高い（股関節痛）：単純性股関節炎
その他の疾患：ペルテス病・大腿骨頭すべり症・白血病・骨腫瘍